木材の長期保存技術
木材の長期保存技術とバイオ乾燥技術
国宝や重要文化財建造物が焼失した後に復元したり、あるいは建て替えをするときの構造材や化粧材には、多くは長期保存技術が要求されます。例えば、防腐、防虫、狂い防止、割れ防止、不燃化の全ての薬剤(環境に無害な水溶液)を同時に木の細胞の全てに注入させ、さらに、薬剤の有効成分だけを細胞内に閉じ込めて水だけを排出する高度乾燥技術が要求されます。
木材の長期保存技術には、木の弱点とされる以下の要素を克服させることにより完成されます。
- 腐らなくする(防腐処理)
- 虫が侵入できなくする(防虫処理)
- 割れなくする(割れ防止処理)
- 狂わなくする(縮小防止処理、膨張防止処理、曲がり防止処理)
- 燃えなくする(不燃化処理)
木材の長期保存技術には、以下の技術を克服する必要があります。
- 薬剤注入技術: 処理薬剤を全ての細胞に注入されること。
- 細胞を破壊させないで処理する技術: 注入するために細胞破壊工法(減圧・加圧処理)を使用しないこと。細胞破壊により注入した薬剤が長期間にわたり浸み出してきます。よって、長期保存にはなれません・
- 超低温の技術: 処理材を乾燥するときに、中温乾燥(60℃前後)・高温乾燥(100℃前後)を実施しないこと。木材のリグニン(木材の接着剤と言われる重要な保護機能を持っている)は60℃前後で酸化し始めるため、長期保存材には適しません。また、80~130℃で高温乾燥させると、リグニンが燃焼過程に入るため材が黒色化し異臭を放ちます。さらに注入した薬剤の多くが放出されてしまい、長期保存には適しません。
長期保存技術を語る(1)
長期保存技術を語る(2)
「旧浜離宮・松の茶屋」復元工事の施工会社; 郷建設株式会社(東京都)豊中社長
>> 旧浜離宮工事
長期保存木材の出来あがりが以下の写真です。
- 東大寺総合文化センターのエントランスに用いた化粧丸太(スギ、長さ6m)に長期保存技術処理を行いました。一部を切り落とした材の切断面は薬剤が細胞全体に注入されているため、芯(髄)から樹皮の形成層までの全体にいたって一切の割れがありません。
- 節の周辺には薬剤が注入されにくいのですが、バイオ技術で注入された場合、薬剤が隅々まで注入されるため節の割れも見られません。
- 旧浜離宮・松の茶屋復元工事の構造材の多くには長期保存薬剤注入処理が成されました。不燃薬剤の注入は要望されませんでしたが、防腐・防虫・割れ防止、曲がり防止の薬剤は細胞の隅々にまで注入されました。
この長期保存処理材の細胞全体に防腐剤・防虫剤が注入されているため、いかなる微生物(細菌、カビ)も昆虫(キクイムシや白蟻など)も、半永久的にどこからも侵入出来なくなります。また、割れ防止剤、曲がり防止剤、必要であれば不燃剤を細胞の全てに注入します。但し、細胞の全体を破壊する減圧・加圧注入処理や、高温乾燥を採用した場合には、処理の工程で細胞が破壊され、薬剤の多くが放出されるため、長期保存は困難です。東大寺、旧浜離宮、皇居、文化財建造物保存技術協会ビルなどに弊社の長期保存技術が採用されました。